食料基地北海道で進む「食と農の善循環による環境改善」の動き
〜有珠郡大滝村では「有機物再資源化センター」を建設中〜
大滝村が「EM活用による、クリーン産業を目指した村づくり」
「安心安全な農畜産物の生産を目指す」渡邊村長
 温泉観光地として有名な北海道有珠郡大滝村(人口1,600人、渡邊實村長)では、「未来に贈ろう豊かな森と湯の里」をテーマに平成13年度からクリーン産業の育成を目指した村づくりを推進している。渡邊村長は、平成15年3月の同村議会で「有機物を再資源化、堆肥化する『大滝村有機物再資源化センター』を建設し、消費者に安心して購入してもらえる農畜産物の生産を目指し、平成15年11月には施設の建設を終え試運転を開始し、平成16年4月から本格稼動させる」と表明した(同村執行方針)。
大滝村渡邊村長(右)と話合うU-ネットメンバー
福田技術委員会委員長(左2人目)
石川北海道地区リーダー(同3人目) (北海道農業開発公社幹部たちも同行)
同計画は、村内で発生する全ての有機物残渣(農業残渣、事業所食品残渣、家庭食品残渣、剪定残渣、家畜糞尿)をEM技術の活用により発酵肥料・堆肥化して農業に再活用するという善循環方式を採用しており、産業課(金子三也課長)を中心として全村挙げて取り組み中のもの。基本システムには、道内ホテルの生ごみ(調理残渣・食べ残し)リサイクルでの実績を持つ(株)K&K社のノウハウを採用している。

JRタワー・ホテル日航札幌も参加
〜ホテル生ごみのリサイクルによる食と農の善循環〜

 北海道における生ごみリサイクルは、札幌グランドホテルに続き平成15年5月開業のJRタワー・ホテル日航札幌でも採用された。同地区で最も評価の高い老舗ホテルと最新最大の両ホテルでの相次ぐ生ごみのリサイクル採用は、今後の生ごみリサイクル拡大に弾みをつけるものとして、環境問題に関心を持つ業界や市民、行政などから注目されている。
 また、両ホテルを基点とした生ごみから異物を除いた有機資源は、(株)K&K再資源化センターでの飼料化、堆肥化→近隣牧場での酪農品生産と糞尿発酵肥料化→近隣農場での農産品生産と残渣回収→消費者への還流(ホテル、デパート、生協等)と連鎖しており、食と農の善循環による環境改善への波及効果が期待されている。

拡大する食と農の善循環システムとEM栽培有機JAS認定農産品
〜北海道農業からの現地レポート〜
 北海道における<食と農の善循環システム>は、ここ2、3年急拡大傾向にあり、平成15年度の参加規模は、ホテル2、畜産農家25、田畑農家35、作付け面積は60ヘクタールとなっている。食と農の善循環を基本に据えた農業には<人間の健康と自然の蘇生を実現する>という大きなテーマがあり、遠別町における(株)遠別農業公社(有田社長)のように建設業界からの新規参入組もあって、今後益々拡大するものと期待されている。以下、写真を中心に関連農畜産農家の一部を紹介する。

養豚場では悪臭対策にEMが大活躍
 留寿都村の松田畜産(1〜2千匹規模)では、養豚場(大滝村内に設置)と屎尿搬出先での悪臭に悩まされていたが、大滝村から出されていたEM情報をもとに平成14年春から養豚場内でEM活性液散布を実施した結果、悪臭問題が解消したばかりでなく、豚の病気と死亡数が激減している。今後は隣接農家によるEM発酵屎尿の積極的な使用拡大が期待されている。写真は、<訴訟問題になった養豚場の悪臭対策>のため訪れた一行にEM活用と効果の現状について説明する松田オーナー(中央)。

大滝村特産品・アロニアの育成
 大滝村では、平成13年度より農業振興作物としてアロニア(北米原産ロシア種)の栽培を開始し村の特産品として育成している。このアロニアはポリフェノールが多く含まれているなど健康果樹として注目されている。写真は、食品残渣が主原料のEM発酵有機肥料を使用して大きな実をつけたアロニア。収穫後はジャムに加工される。

喜茂別町では有機JAS認証トマト
 有珠郡喜茂別町では、(株)K&Kが地元農家と共同で有機農産物生産ほ場(管理責任者石川文雄さん)を設置して有機JAS認証トマトを生産し関東地区等に出荷している。また、JAS認証は申請していないが、食と農の善循環によるEM発酵有機肥料を積極的に活用して、カボチャ、ジャガイモ、ホワイトアスパラなどの栽培をしている。写真は発酵有機肥料(EM)で栽培され出荷を待つジャガイモ。

栗沢町でも有機JAS認証玉ねぎ
 栗沢町では、K&K北の食農グループ(古堂明代表)が長年有機栽培に取り組んでいるが、平成15年度から有機JAS認証の玉ねぎを生産し、首都圏生協などに出荷している。また、 同地区では、EM発酵有機肥料を使用してトウモロコシやカボチャなどを生産しており、食と農の善循環システムにより有機栽培を120ヘクタールに拡大する計画がある。写真は首都圏生協への出荷を待つ有機JAS認証玉ねぎ。

EM発酵飼料で発酵堆肥づくり
 三笠市の高嶋牧場(100頭規模)では、乳牛の餌に1パーセントの生ごみEM発酵飼料を混入することにより、上質な発酵堆肥を作り栗沢町など近隣の有機栽培農家に提供して、食と農の善循環の一翼を担っている。写真は乳牛にEM発酵飼料を与える高嶋牧場主。

発酵堆肥で有機JAS認証米
 南幌町の城地農産グループ(15農家・32ヘクタール、城地英紀代表)では、生ごみや牧場からのEM発酵堆肥を活用して有機JAS認証米を生産し、その有機米を生ごみ提供のホテルに還流させる<食と農の善循環活動>を積極的に推進している。写真は冷夏による稲作への影響をチェックする城地代表(左)と石川K&K社長。


甦らそう縄文の豊かな海を!
 今から約5,000年前の日本最古の淡水真珠、4,000年前の丸木船、隠岐島産の黒曜石、漆塗りの簪、さらに海豚(いるか)や鯨食の痕跡が発見された縄文遺跡の鳥浜貝塚やユリ遺跡のある福井県三方郡の三方五湖周辺は、以後、弥生時代から中世にかけての遺跡が連綿と続き、海山の豊潤な食物に恵まれた御食国(みけつくに)として、古来朝廷に御贄を納めた国の、中程に位置している。
 三方五湖周辺は山紫水明な風景から、訪れた時には環境汚染からはほど遠い場所であるとのイメージを受けた。しかし、ここも戦後の近代的農業等を含めた新しい生活の中で環境汚染が進み、湖にもヘドロの堆積による悪臭やアオコ等の問題が発生している。このような環境を甦らせるためのEMを活用した活動状況説明を、U-ネット技術委員の松井氏(三方郡EM研究会会長、町議会議員)から受けることにした。

 平成6年4月、三方五湖と周辺の流入河川の水質浄化を目的として、三方五湖浄化推進協議会(吉田会長※略称"湖・浄・協")が設立。平成11年3月から北陸EM普及センターによる1t/月の活性液の支援、さらに平成12年7月には県環境政策課の委託でEMによる水質実験等も開始され、平成13年8月からは二つの人工池でEMの効果についての比較実験も行われた。二つの実験池は共に10m(径)×2m(深)の大きさで、浚渫ヘドロを同量投入し、水を入れた後は天水による補給のみという完全な閉鎖池状態。一方はそのまま放置し、片方に3.0リットル/日量の活性液を投入して経過観察が行われ、平成14年11月に完了した。EMを添加した池ではヘドロがトロトロした状態に変化したりエビ等が多数発生したことが確認され、生物指標的な観察では大きな差が見られていたが、水質データ等の測定をした業者からは無味乾燥な科学的測定データのみ記載された報告書が提出されて、「報告書だけを見た人には、実験時に肌で感じた自然界の再生現象を的確に理解してもらえないのではないか」と心配する声もあった。しかし、この状況の差は三方町建設環境課の吉田主事も確認されており、今年から三方町給食センターの米のとぎ汁を活用した発酵液を河川に投入する作業も継続して実施される等、EMによる浄化活動に期待が寄せられていた。この他に県の支援前のEM団子による実験では、カナダ藻がエビ藻に変わる等のEMによる効果についても地道に活動が取り進められ、それぞれについての貴重なデータが大切に整理保存されている。

 湖・浄・協の会員による活動は9月27日にも行われ、会長から参加児童に対して、川に魚が豊かだった頃(40数年前?)の話や、「当時の状況に戻したい」との活動目的や意義などの説明がなされた後、河川周辺のゴミ掃除や活性液の散布が行われた。


河川へのEM活性液および
米のとぎ汁発酵液の投入準備

河川への米のとぎ汁発酵液等の投入

 また、今年から環境学習指定校となった6校の小学校に対して、EMを活用した環境学習の採用を意図し、元教師でEM研究会理事の奥村さんを中心に関係者との協議も進められている。

 その他、河川湖沼浄化以外に、約20年前に賢い消費者を育てる講座の参加者によって結成された"みなおし会" (吉田世話人)の活動の中で、奥村さんと上下さんをリーダーとしたボカシ作りも8年前から続いており、世間話等をしながら楽しくボカシ作りをした後、参加者が持ち寄ったお菓子などを食べながらEMを含めた情報交換会が催され、日頃のストレス解消が図られている。


ボカシ作り
 また、湖と海が一望できるレイボーラインの展望台等の事業を行っている(株)レインボーラインの村田専務からは、展望台に設置されているトイレの悪臭に悩まされ試行錯誤している時に、松井氏の協力のもと約1年かけてEMによる悪臭対策に取り組み、現在は全く問題がなくなったとの話を聴くことも出来た。今後は四日市の小川さん(U-ネット技術委員)の協力を得て、EM団子による湖の出口の浄化に取り組む予定もあり、一日も早い縄文時代のような豊かな海に甦ることを期待したい。


仙台、生ゴミリサイクルの活動 〜米穀店が地域の相談所〜
 宮城県仙台市では、生ゴミリサイクルの講習会や分別、バケツの補助などを行い、行政としても環境問題に積極的だが、EMでの取り組みもそれに準じてしっかりと根付いてきている。
 「SEM(松陵EM)サークル」は、平成12年に「生ゴミ堆肥Q&A教え合い教室」を始め、今年度より現在の名前に変更。ボカシ作りを中心に石鹸作り等の活動を定期的に続けている。集合して作ったボカシは各家庭で持ち帰って乾燥し、その後持ち寄るという方式。作ったボカシの在庫は残らずほぼ使い切り、石鹸作りも良い品質ができている。
仙台、生ゴミリサイクルの活動  取材当日は地域でのお祭り(松陵市民センター祭り)に参加しており、ボカシ作りの実演やEM処理生ごみを利用した土作りの様子を展示するなど、常に見物人がいるという状態。ボカシやプリン石鹸も共に上々の売れ行きで、子ども達もかわいらしい売り子となって、積極的に参加していた。このお祭りには51団体のサークルが参加しており、分野を問わずに交流が盛んなため、特に環境問題に関心のある参加者に限らずEMを知る良い機会となっているようだ。「1年前に買ったのだけれど・・」と相談に訪れる人もおり、地域に密着したイベントとなっている。

 U-ネット会員で「仙台EMボカシクラブ」の代表の八島静子さんはEMを知って7〜8年目だが、お米屋さんであることでボカシの原料となる米ヌカも不足することなく、うまくリサイクルがなされている。ご夫妻でEM資材やEM農家の無農薬米の販売も行なっているので、地域のお客さんが相談に来ることも多いという。「米屋がボカシ作りに関るのはとても効率的で良いことだと思っている。なぜほかのお米屋さんがやらないのか不思議です。」とのこと。米穀店からボカシ作りのネットワークが広がっているのは非常に頼もしい限りだ。仙台市つるがや福祉作業所でもEMボカシ作りが行なわれているが、さらに良いボカシを作るための協力を惜しまない。また、生ごみリサイクルグループのお仲間(松島在住)は、自分の家庭から出る屎尿や赤ちゃんの布オムツの汚れもすべて堆肥にし、畑の肥料にしている徹底ぶりで、野菜が無理なくよく育ち長く収穫できていた。
 交流を大切にしながらこだわりなくのびのびと活動することで、多くの人が環境問題に関心を持っていく過程は、見ていて非常に楽しいものだった。


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