大きく前進した愛知県三河湾の浄化活動
〜矢作川にアユが大量に遡上、三河湾にはスナメリが遊泳中〜
 愛知県は、日本の中央に位置し、歴史的には戦国の三大英傑(信長、秀吉、家康)を排出した地域として、近年はトヨタに代表される自動車や航空機、鉄道車両などの生産基地として有名である。一方、優良な畑地から生産される野菜類や三河・伊勢両湾から獲れる魚介類も豊富。しかしながら、工場廃水、生活排水等による河川の汚染が進み、三河湾に棲むスナメリ(イルカの一種)が絶滅の危機にさらされるなど環境面の悪化も進んでいた。こうした状況をEM技術で改善しようとするグループが平成11年頃から浄化活動を開始し、平成16年の愛知万博『愛・地球博』の開催を契機に急速に拡大し、矢作川を中心に大きな成果を上げている。河川・池の浄化、有機農業推進の様子を現地リポートでお届けする。

矢作川流域ではEM活用による浄化実践グループが次々と誕生
−比嘉教授講演会が契機−
 愛知県では、平成10年の比嘉照夫教授による講演会の開催を契機に、行政や住民による河川の浄化活動が開始されている。平成11年には、西尾市平坂町で「EM自然環境友の会」が平坂入江のヘドロ浄化活動を開始し、東海三河地区で「環境を考える議員連盟」が発足し、各地区で議員自らの河川浄化活動もスタート。平成12年には、吉良町で「三河湾にそそぐ全河川を浄化して、三河湾にスナメリを蘇生させよう」との計画が発表され、同町内の餐場地区遊水池の浄化活動を開始している(詳細:U-ネット通信2001年9月号参照)。

−足助町がいち早く河川浄化を開始−
 豊田市足助町地区(旧足助町の中心街)では、平成15年生活排水で汚染が進む足助川と巴川(矢作川の支流)をEM技術により浄化しようと、水処理専門化の宮川芳久氏(U-ネット技術員)の協力を得て活動をスタートしている(詳細:U-ネット通信2004年6月号参照)。翌16年には、足助商工会に運営を移管し「EM工房もみじ」を発足させている。17年には、EM培養装置を新規購入し、毎週一次培養し、二次培養も毎月4トンに達し、培養したEM活性液は、足助町地区の住民に有償配布している。最近は隣接市町村団体や住民からの販売要請にも応じている。(同工房、柴田栄経営指導員談)また、スタート時点では、EM活性液を全戸に無料配布していたが、商工会移管後は有償とし、現在3割以上の家庭が継続使用している。こうした浄化活動の結果、足助川、巴川の両河川に大量のアユが遡上し、漁獲量も増えている(同工房、金田公一普及指導員談)。

−山間地でもEMを活用−
 平成19年5月末現在、同地区全世帯186のうち約50世帯が、EM活性液をトイレの臭い消しや家庭排水の浄化に活用している。また、老人会も同グループの活動に参加し、EMボカシを作って販売しながら家庭での野菜作りを愉しんでいるという(同)。
 豊田市の北東山間地・明和自治区では、EM技術による河川浄化を目的とした「おだまきの会」(塚田ヒロミ会長、12名)が平成17年に発足している。「きれいな水を下流に送ることが未来のこどもたちに豊かな環境を残すことになる」との想いから、ゴミ拾い、河川の水質検査、EM活用講習会の開催、EM活性液の培養と配布、EM活用事例の視察会開催などの活動を継続している。(同会、会報から)
 EMは、一次培養液を足助町地区のEMもみじ工房から購入し、300リットルタンク2基で二次培養し、希望する各世帯に有償で配布している(同会、安藤みさ子事務局長談)。
「おだまきの会」EM培養タンク。安藤みさ子さん(右)と指導員の金田公一さん
「おだまきの会」EM培養タンク
安藤みさ子さん(右)
と指導員の金田公一さん


矢作川中流域では画期的な河川浄化活動を展開中
−竹炭の粉末を活用−
 矢作川中流域では、NPO矢作川と三河武士フォーラム(豊田市美里、鬼頭俊雄理事長)が中小河川の浄化活動を積極的に展開している。同NPOの取り組みは、平成14年に矢作川支流の樫尾川(毎週800リットル)を、15年からは豊田スタジアムの探索水路(毎週600リットル〜1トン)と御船川(毎週600リットル)を、16年には山の手公園前の川(毎週600リットル)と境川支流の小石川(毎週1トン)を、17年に逢妻川(毎週2トン)をスタートさせる等々、広範囲に亘っている。
 浄化活動は、毎週のEM活性液投入に加え、EMの浄化能力を更に向上させるため、竹炭粉にEM活性液を付着させ河川に投入する方式を開発し活用している。また、微生物の培養は、浄化しようとする現場の川の水を直接汲み上げ、それに種菌となる培養微生物(EM活性液)約1%及び微生物の餌となる糖蜜などを加えて培養するなど独特な浄化方式をとっている。
御船川の浄化現場・EM培養液タンク(2基)。鬼頭俊雄理事長(右)と石川邦夫U―ネット運営委員
御船川の浄化現場・EM培養液タンク(2基)
鬼頭俊雄理事長(右)と
石川邦夫U―ネット運営委員


−愛知万博「愛・地球博」での発表−
 同NPOは、地球博・市民参加プロジェクトの一環として、<地球がくれた宝物“竹炭と微生物”>をテーマに、河川浄化活動の様子を発表し、注目を浴びている。
 これを契機に、地元名古屋地区をはじめ県内外からの問い合わせ及び指導要請が殺到しているという(同鬼頭理事長談)。

多くの活動仲間たちが連携する「三河湾浄化市民塾」の集い
 矢作川の下流域に位置する地域では、三河湾浄化市民塾(三浦進代表)を核に、河川浄化活動の波が、岡崎・安城・西尾・刈谷・一色・幡豆・蒲郡などの各市町で大きなうねりとなって広がっている。同市民塾は、岡崎市内の授産施設でのEM活性液作りからスタートしたが、平成16年安城駅近くにオープンしたレストラン・カフェ<あんぐる>を拠点に、30〜50名の仲間達が、毎月・第三月曜日の午後7時から集い、EM技術や活動方策などの情報交換をして各地区活動の連携強化を図っている。
 三浦代表は、「三河湾浄化市民塾は、会則無し・会費無し・自由参加を基本とし、愉しくワイワイやっていますヨ。」と、笑顔で話す。こうした市民塾の愉しい活動振りは、地域に大きな刺激となっている。例えば、三河安城のロータリークラブは、汚染が進み漁業補償の対象となっている「油ヶ渕」で、自主的なEMによる浄化活動を開始し、月間40トンもの活性液を培養・投入しているという(同代表談)。また、<あんぐる>には、EM資材はもとより市民塾会員が作ったEM関連商品が展示販売されており、訪れる主婦達はみなEMファン・活用者になっている(カフェ会員談)。

−貝類がざくざく獲れる三河湾沿岸−
 三河湾沿線に位置する蒲郡市では、西浦温泉地区のホテル浄化槽をEM技術で浄化しようと、平成14年頃から市民塾会員によるEM活性液投入を開始している。現在も毎週300リットルの投入が続けられており、嘗て汚染が酷かった三河湾への排出口に貝類が多く見られるようなっている。隣接する幡豆町、吉良町、一色町、西尾市などでも、市民塾会員による浄化活動が進められている。蒲郡市沿岸では、大量の貝類が獲れると評判になり、親子連れの潮干狩りで賑わっている(近辺住民談)。また、三河湾では、スナメリが群れをなして泳いでいる姿を目撃した漁民もいる(三浦代表談)という。こうした朗報は、矢作川支流や三河湾沿線の各地で環境浄化に取り組む仲間達の活力源となっており、浄化活動の輪が更に広がるものと期待されている。

−人工池でのEM活用による水管理−
 愛知県熱田区の市営白鳥公園では、日量約5000トンの工業用水を活用し、公園内の滝、川、池を循環させる水管理を実施している。しかしながら、開場以来20年近く、アオミドロの繁茂や夏場の悪臭に悩まされ、塩素消毒などによる対策にも限度が出ていた。管理受託会社・豊国工業(株)(名古屋市、河村敏明社長)は、EMによる河川の浄化活動を知り、U-ネット関係者(小川敦司三重県リーダー、岡正典技術委員)の指導を受け、平成14年に、EM培養装置を導入し、毎月2トンの活性液を池に投入し、滝の頂上(汲みあげ水の放出口)には約10キロのEMセラミックを、更に池には三千個のEM団子を投入するなどの浄化活動を継続した結果、顕著な改善効果が現れた。2年目まではアオミドロとの苦闘に悩まされるなどの紆余曲折はあったが、平成18年からは、驚くほどに水がきれいになり、悪臭の発生もなく、池の魚が死亡しなくなり、水鳥も飛来している(同庭園管理事務所、柳生奈緒子さん談)。
 豊国工業では、常滑市営公園、小牧駅前公園など4箇所の池でも同様な改善効果を出している(同河村社長)という。既に、名古屋市の徳川公園や鶴舞公園などからの引き合いも出ており、企業による水管理へのEM活用事例として注目されている。



北海道南部地区で屎尿処理にEMを活用
−屎尿処理場におけるEM活用状況−
 道南地区における屎尿処理場でのEM活用は、旧恵山町(現函館市) で1998年6月から開始され、2004年12月の合併で屎尿処理場が閉鎖されるまでの約5年、継続されていた。渡島西部衛生センターでは、恵山の経験を活かして、2001年6月からEMが活用されている(同処理場松本主任技師談)。当センターは松前町・福島町・知内町・木古内町の4町で構成され、現在の収集対象人口は27,202人である。

−臭気対策で効果−
 屎尿処理場の処理能力は、日量70klで、二段活性汚泥処理方式が採用されている。再曝気後原水槽に送られ、原水槽で分離された汚泥は脱水処理後場外に搬出される。また、原水槽の上澄み液は、土壌式接触循環曝気槽から接触槽を経由して放流され、河川水により10倍希釈される。放流水質は、BODが1〜3ppm、透視度は60〜70cm。降雨時には河川水の汚れで低くなる(松本主任技師談)。
 EM活性液は、2台の100倍利器で毎週800l造られており、屎尿投入槽へは、2ヶ所から毎日30l散布されている。また貯留槽他槽内5ヶ所には計100lを毎日投入している。操業施設内用脱臭設備1ヶ所には、毎日20 l散布されている。なお、槽内散布は、水で20倍に、脱臭設備には、50倍に希釈して散布されている。臭気測定の結果は、2003年から硫化水素、メチルメルカプタンが定量下限未満となり、2002年に0.2ppmであったアンモニアが2005年には定量下限未満となった。
 現場のEM効果に関する評価は、施設内及び周辺の悪臭は大幅に低減、最初に硫化水素、次にアンモニアにも処理効果が現れているが、硫化メチルは難しかった(同主任技師談)。また、活性液を活用すると配管内に微生物膜ができ、その除去が難しいが、脱水汚泥の汚泥肥料分析結果は有害規制項目全てが定量下限値未満であり、緑化等に安心して使用されている(同主任技師談)。管理における苦労としてはサンポールやドメスト等の悪影響、特にプレハブトイレに使用される不凍液は最悪とのことであった。
 EMによって劣悪な作業環境や周辺への悪臭被害を低減させることが証明されている施設であり、今後、自信を持って行政に提案できる事例であった。


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