着々進む「バイオマスタウン構想」の推進
〜山梨県笛吹市ではEM技術を活用したバイオマス事業を展開中〜
 「バイオマスタウン構想」は、政府主導で平成16年にスタート。平成18年末に成立した「有機農業推進法」とともに、日本の農業を慣行農法から環境保全型農法に変換させる施策として注目されている。平成20年6月末現在、161市町村がこの構想に沿った事業を打ち出しており、平成22年中には300市町村・地域での事業化が予定されている。
 今号では、こうした動きについて山梨県、岐阜県、長野県の生ごみリサイクル事業を中心に、現地リポートでお届けする。
日本一の桃源郷を「日本一のバイオマスタウン」に!
−生ごみと剪定枝の利活用−
 山梨県笛吹市(人口7万2,000人)は、桃・ぶどう生産量でダントツの日本一を誇っている。美しい山々と清流に恵まれたこの自然を、環境重視型の「バイオマスタウン構想」により、観光と農林の両面振興に活かす事業を平成19年に開始した。同事業は、微生物の活用により三年間で、生ごみの利活用を6パーセントから90パーセントに、果樹等剪定枝の利活用を0パーセントから40パーセントに、夫々引上げ、資源のリサイクルと環境の保全を推進する、としている。

−微生物活用による農業の振興−
 有用微生物群EMを活用した果樹の栽培では、同市一宮町の清果園(鮫谷陸雄代表、U-ネット会員)による桃・ぶどうの栽培が全国的に有名。同園主の鮫谷さんは「地球を救う大変革」(比嘉照夫著、サンマーク出版)に触発され、平成6年頃から農薬を使わない栽培を目指し、高品質・高糖度・高収益の果樹園経営を実現している。同バイオマスタウン構想ではこうした実績を参考に、全市民の理解と協力を得ながら、ハイレベルの笛吹ブランドの確立を目指したい、としている。
バイオマス構想事業を推進する笛吹市:荻野正直市長(左)とU-ネット甲信地区世話人:鮫谷陸雄さん
バイオマス構想事業を推進する
笛吹市:荻野正直市長(左)と
U-ネット甲信地区世話人:鮫谷陸雄さん
「桃・ぶどう日本一の郷」笛吹市の全景(写真:笛吹市提供)
「桃・ぶどう日本一の郷」
笛吹市の全景(写真:笛吹市提供)
バイオマスタウン構想・現場の推進役産業観光部 雨宮リーダー(右)と降矢さん(左)
バイオマスタウン構想・現場の推進役
産業観光部 雨宮リーダー(右)と
降矢さん(左)


積極果敢な設備投資と有機栽培の普及活動を展開
−事業1〜2年目で厳しく評価−
 笛吹市が推進しているバイオマスタウン構想は、極めて具体的である。二年間で「現在焼却処分している果樹剪定枝をチップ化し、微生物の活用で良質な堆肥とし農家で活用する」「生ごみは、学校などのモデル地区を設定し、微生物の活用で良質な堆肥とし、農家で活用する」というもの。
バイオマスセンターに設置されたEM活性液製造装置(百倍利器、二次培養装置)
バイオマスセンターに設置された
EM活性液製造装置(百倍利器、二次培養装置)

モデル地区から搬入される生ごみを堆肥化するバイオマスセンターの生ごみ処理機(大型蘇生利器:S100)
モデル地区から搬入される生ごみを
堆肥化するバイオマスセンターの
生ごみ処理機(大型蘇生利器:S100)
 既に、初年度に約3,000万円(約半分が国からの補助)を投入し、剪定枝粉砕機(12台)、EM活性液製造装置(百倍利器、二次培養装置)、生ごみ処理機(蘇生利器大型1基、小2基)、簡易型糖度測定センサー(1台)を導入している。
 二年目となる平成20年度においても、約3,700万円を投入し、剪定枝粉砕機(20台)、EM活性液製造装置(1基)、生ごみ処理機(蘇生利器小型3基)、乾燥機(1基)などの追加導入を進めている。更に、これらの設備により、同市内のボランティアグループの協力を得て、有用微生物群EMを活用した剪定枝と生ごみの堆肥化が着々と進められおり、同堆肥の活用による農産品の品質評価(糖度など)の厳しい評価が行われる。
 また、農閑期には「EMを活用した土づくり講習会」も積極的に進められており、初年度においては4回実施し、参加者も延べ298人に達している。

−有機栽培農家の育成と市民の協力がカギ−
 事業の三年目には、同地域の全ての有機残渣(年間約3,000トン)を一気に完全リサイクルする大型プラントの導入を目指している。既に、推進プロジェクトチーム(経営企画、農林振興、生ごみ減量の部門合同)を発足させ、処理システム、経営形態、事業評価などの検討を進めている。  笛吹市では、バイオマスタウン構想の推進により時代を先取りした観光と農業の「笛吹ブランド」確立を目指しているが、事業の成否は全市民による協力体制の構築にある(同市農林振興課談)としている。
学校給食の生ごみ残渣を堆肥化している小型蘇生利器(S60)(石和南小学校)
学校給食の生ごみ残渣を
堆肥化している小型蘇生利器
(S60)(石和南小学校)


生ゴミは住んでいる地元の土に還そう!! 〜岐阜の生ゴミリサイクル〜
 岐阜県は、北部に標高3,000メートル級の飛騨山脈をはじめとする山岳地帯があり、南西部には木曽三川で有名な木曽川、長良川、揖斐川の流域には水郷地帯が広がり、肥沃な土地に恵まれた地域である。今回、岐阜でのEM生ゴミ処理の取り組みの様子を、中部普及所所長の織田安雄さんの案内で訪ねた。

−町・地域ぐるみのリサイクル活動−
 岐阜県輪之内町(人口一万人弱)では、平成12年に県内市町村として初のISO14001認定を取得し、平成16年には、「輪之内環境基本計画」を策定するなど環境事業を積極的に推進している。NPO法人ピープルズコミュニティ(安田裕美子理事長)は、町中心地の“エコドーム”と呼ばれるリサイクル施設で活動している。エコドームは、廃棄物の集積場としてだけではなく、資源ゴミのリサイクル及び環境学習の拠点とし、再利用可能な資源を全て回収する場として、同NPOに管理運営を委託されている。
NPOピープルズコミュニティ安田理事長(右)
NPOピープルズコミュニティ安田理事長(右)
 町の50パーセントの世帯(約1,300世帯)が、9種28品目の分別回収を行っている。例えば、回収した割り箸は王子製紙にリサイクルに出し、ペットボトルや空き缶は自動販売機のような機械に投入し、ペットボトルは粉砕、空き缶はプレスしてリサイクルしている。

[生ゴミリサイクルにEM活用]
 生ゴミは、畑などで自己処理できる地区は各自で処理し、自己処理できない世帯の多い地区(34ステーション)の生ゴミを回収している。回収する生ゴミには、EMバケツを使用し、各家庭でボカシをあえてもらい、月に2度回収をしているが、エコドームへ直接来て生ゴミを出すことも可能である。使用するボカシは、春と秋にNPOが各地域に赴き、ボカシ作りの指導をし、住民の皆さんが作っている。この資材費は町が負担している。また、回収した生ゴミは、生ゴミ処理機(200キログラム/日処理)により24時間で堆肥化している。
1日200キログラム堆肥化する処理機
1日200キログラム堆肥化する処理機
 そして、生ゴミ処理機で作られた堆肥は、毎週火曜日無料で配布されているが、人気が高く行列ができるという。
 また、畑のない人に町の土地を「いきいき農園」として50区画貸出している。



[環境省の地域環境保全功労者を受賞]
 今年6月、環境省の地域循環保全功労者に選ばれ、表彰を受けた。環境保全や環境美化に功績があった団体などに贈られるもので、安田理事長は、「町民の取り組みを代表して、表彰されただけです。続けるには基本が一番大切ですね。」と笑顔で語る。帰り際、農園でできた野菜入り手作りクッキーをおみやげに頂いた。楽しみながら活動をしているのが、とてもよく伝わってきた。

−10年目になる生ゴミリサイクルモデル事業−
 環境浄化を進める会岐阜(藤川幹生理事長)は、岐阜県岐阜市より市のゴミ処理施設「掛洞プラント」の一角で委託を受け、生ゴミ処理モデル事業をしている。
 岐阜市内7地区1団体が、生ゴミ堆肥化推進事業に参加し、平成19年度は約115トンの生ゴミを23トンの堆肥にしている。このモデル事業は今年10年目になる。

左から石川東海地区ネットリーダー、環境浄化を進める会岐阜藤川理事長、(財)自然農法国際研究開発センター中部地区普及所織田所長
左から石川東海地区ネットリーダー、
環境浄化を進める会岐阜藤川理事長、
中部地区普及所織田所長
[習慣づけできれば、長続きする]
 同事業の推進役である藤川さんは、「一度習慣づけできれば長続きします」と継続のコツを語った。
 年々参加する市民の皆さんも、水分を減らすなど生ゴミの出し方を工夫され、参加者数は変わらないが、回収量が減っている。しかも堆肥量は前年とほぼ同量であった。
 生ゴミ回収には、生分解性の袋を使用し、粉砕機で粉砕後、生ゴミ発酵装置で30日かけて発酵させる。更に30日程度再発酵させて水分30パーセントの堆肥とする。完成堆肥は、週末や祝日に開催される野菜市場に出品している人達に優先で配布しているが、すぐになくなるほどの人気。また、できた生ゴミ堆肥で作ったジャガイモやタマネギ、大根などを各家庭に数個ずつ配布して参加者に還元したり、市役所などの玄関に、チューリップやユリ、トマトなどをプランター栽培したものを継続的に飾っている。
 また、この処理施設から生じる水分や排気など配管を通じて市の焼却炉に排出し、炉の消臭に役立てている。



食の自然循環モデルを目指す駒ヶ根のEM活動
〜食・農・いのちをつなげる生ごみリサイクル〜
 EMの基本技術に地元の酵素等を活用した生ごみリサイクル事業は、長野県諏訪地域で着々と確実に進展している。この事業で成果を上げている(有)ドミソ環境の兄弟会社である(株)ドミソが運営する駒ヶ根市の「生ゴミ堆肥化施設」を訪ねた。

 駒ヶ根市では市の施策として生ごみの資源化(堆肥化)を積極的に進めている。従来からの事業系・公共施設から排出される生ごみの堆肥化に続き、今年9月からモデル地域を設定しての第1陣500世帯の一般家庭を対象に生ごみ回収からの堆肥化事業を実施する。これに関係する(株)ドミソ社長の牧野勝・幸子さんご夫婦と、U-ネット長野県リーダーである諏訪明子さんの環境団体等を巻き込んで進める、食・農・いのちをつなげる生ごみリサイクルをレポートする。

駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設と左から(株)ドミソ社長牧野勝・幸子さんご夫婦、U-ネット長野県リーダー諏訪明子さん
駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設と左から
(株)ドミソ社長牧野勝・幸子さんご夫婦、
U-ネット長野県リーダー諏訪明子さん
−平成9年から循環型まちづくりに取り組む−
 駒ヶ根市は長野県の南部に位置し、東に南アルプス、西に駒ケ岳をはじめ中央アルプスの峰々、その裾野に広がる駒ヶ根高原といった有名な観光地があり、稲作・果樹園芸・野菜・畜産などバラエティーに富んだ農業にも恵まれた人口約35,000人の観光と農業がよくバランスのとれた田園都市だ。
 また、EMによる循環型のまちづくりにも早くから取り組んできた。平成9年から、市や県の公共施設や商店街施設から排出される生ごみのリサイクルを、地元営農組合の協力を得ながら進めてきている。現在、駒ヶ根市から委託を受けこれを推進する事業主体が(株)セイビ社と(株)ドミソだ。(株)ドミソ社長の牧野勝氏は下諏訪町、岡谷市、辰野町で公共施設や一般家庭の生ごみリサイクルを受託している。出来た堆肥は地域の農家で長年にわたり使用され、農産物となって自然循環型農業が推進されている。ここで培ったノウハウも駒ヶ根市で生かされるのだ。

駒ヶ根市の一般家庭用EMバケツ
駒ヶ根市の一般家庭用EMバケツ
−生ごみが300分の1に減容するシステム−
 ドミソ式生ごみリサイクルは、3つの鉄則に基づき進めている。?自然環境に負荷を与えない、?良質な堆肥を作る、?食の完全自然循環を確立する、である。手順としては、家庭や事業所などから生ごみの入ったバケツを回収する。その生ごみを有機物減容再生機(微生物と酵素による生ごみ処理機)に投入して一次処理をする。
バケツ回収した生ごみを再生機で処理する(駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設内部)
バケツ回収した生ごみを
再生機で処理する
(駒ヶ根市生ゴミ堆肥化施設内部)
 この再生機には、モミガラと戻し堆肥、それにEMスーパーセラ発酵Cが投入されている。特徴としては、水分調整材として大量のモミガラを用い中温発酵で一次処理していることだ。二次処理は屋根付の堆肥置き場で3ヶ月以上熟成させる。この期間、消臭や堆肥の質を上げるため定期的に50倍に薄めたEM活性液を噴霧している。そして何よりこの処理システムの大きな特長は、生ごみが体積で約300分の1に減容することだ。

−「酵素ドミソくん」堆肥はひっぱりだこ−
 熟成された堆肥は黒く砂のようにサラサラで、「酵素ドミソくん((有)ドミソ環境で堆肥化した商品名)」と名づけられ、有機栽培農家などにわれ先と引き取られていく。この堆肥には有用な酵素のほか珪酸が8パーセントも入っている。珪酸は植物にとって人間のカルシウムにあたるので、成長に不可欠で丈夫に育つのだそうだ。
 高品質な有機堆肥なので、生産者である農家にとっては増収になり食味も向上し安心で安全な農作物が栽培できるので、よく売れる。この農作物を食べる消費者には美味しくて安心安全なので大いに喜ばれる。また、消費者の出す野菜の調理くず等生ごみがリサイクルされるので食の完全自然循環が確立される。
 駒ヶ根市の農地は17年度調べで1,545ヘクタールあり、農家も1,989世帯もある。食の完全自然循環モデルを目指す要素が駒ヶ根市にはあると思われる。食糧自給率確保という日本の命題があることからも、数年後の展開が楽しみである。
 最後に、牧野さんの次の一言が印象的であった。それは、「生ごみリサイクル以前に、生ごみを台所や食卓から出さない食習慣にすることです」と。



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